争点(1)(利息制限法所定の制限利率を定めるに当たり,契約限度額を基準とすることができるか。)について

本件の取引は,一連一体の取引と認められるから,形式的には新たな貸付であっても,実質的には従前の貸増し又は借換えにすぎないものと考える。
このような場合の利息制限法所定の制限利率を定めるに当たっては,まず当初の実質的な貸付額を基準とし,その後の貸付日における残元本額と当該貸付の交付額の合計額(残元金)に適用される制限利率を比較して,これまでに適用された制限利率より低くなる場合には,新たにその低い利率が適用になると考えるのが相当である。
そして,その後の貸付の際に更に残元金が減少しても,それが一部弁済等による場合には,従前の制限利率は維持されるとするのが取引の実態を反映しているものと考える。
したがって,本件においては,当初の貸付額が30万円であり,その後の貸付日における残元金が100万円以上になったことは一度もないのであるから,その適用利率は当初から取引終了時まで年18パーセントの割合により計算するのが相当である。

ところで,原告は,本件取引には契約限度額の定めがあるから,利息制限法の制限利率は,その額を元本とすべきである旨主張するが,包括契約における契約限度額とは,一般的に,貸主が借主に与える信用の範囲や取引額の目安の意味に解され,現実の借入額とは乖離していることが多いから,実質的にこれを制限利率を定める基準とするのは相当ではない。